はじめに
副業解禁の流れが進み、企業でも
「副業OK」という言葉を目にすることが増えました。
しかし、実際には
「OKと言いながら制限がある」「就業規則に禁止条項がある」といったケースも少なくありません。
この記事では、
副業を始める前に必ず就業規則で確認しておくべき項目を整理します。
内容は法的助言ではなく、働く人が自分で判断・相談できるようになるための情報共有を目的としています。
1. 「副業の可否」だけでなく“条件”を見る
最初に確認すべきは、単に「副業可か不可か」ではなく、
どんな条件で認められているかです。
企業によっては次のような制約が設けられています。
- 競合企業での就業禁止(例:同業他社・取引先への業務)
- 勤務時間外での活動に限定(深夜や勤務日に制限あり)
- 事前申請や届出制(会社への報告が必要)
多くの企業では、形式的に「副業可」と書かれていても、実質的には
事前申請制や
兼業禁止条項で制限されています。
厚生労働省の「
モデル就業規則(令和5年版)」でも、会社が承認する範囲内での副業を推奨しており、完全自由というわけではありません。
💡ポイント:
「申請しなければならないのか」「競業禁止の定義がどうなっているのか」を原文で確認する。
2. 「秘密保持義務」「競業避止義務」もチェック
副業を始める際に最もトラブルになりやすいのが、
守秘義務や競業避止義務の違反です。
例えば、
- 本業で扱っている顧客リストを個人の副業に使う
- 取引先の情報を参考に自分のブログやSNSで発信する
- 同業界の副業(コンサル、ライターなど)で本業のノウハウを流用
これらは「意図的」でなくても、
機密情報の漏洩や信頼失墜とみなされるリスクがあります。
就業規則では以下のような文言に注目しましょう。
「在職中は会社の業務と競合する事業に従事してはならない」
「会社の機密情報を第三者に漏らしてはならない」
💡ポイント:
副業内容が本業と同じ業界・業種の場合、事前に会社へ確認しておくのが安全です。
3. 「勤務時間・健康管理」に関する規定
就業規則では、副業による
過重労働や健康管理にも言及されていることがあります。
労働基準法では、複数の会社で働く場合でも、
労働時間は通算して扱われることがあります。
つまり、本業8時間+副業5時間=13時間労働となれば、労働時間超過の扱いになる場合も。
例:厚労省ガイドライン
- 労働時間の上限規制(原則1週40時間・1日8時間)
- 副業時間を申告する義務があるケースも
副業を始める前に、「勤務時間の申告方法」「休日副業の扱い」など、健康管理・労務規定を確認しておきましょう。
💡ポイント:
就業規則+労使協定(36協定)を両方確認すると、時間外労働の限度がわかります。
4. 会社への「事前申請・届出」の扱い
副業申請を求める企業の場合、申請内容の形式は企業によって異なります。
一般的に求められるのは以下のような情報です。
- 副業先の名称・業種
- 勤務形態・時間
- 収入の有無・金額の目安
- 本業との関連性(競合の有無)
この際、「収入額をすべて報告しなければならない」と誤解する人も多いですが、
申請目的は“競業や労務違反を防ぐ”ことであり、税務申告とは別です。
💡注意:
虚偽申請や無断副業は、懲戒処分の対象になる可能性があります。
5. 就業規則を見ても分からない場合
企業によっては、就業規則に「副業」「兼業」という単語が明示されていないこともあります。
その場合は、次の順序で確認しましょう。
- 人事部・労務担当に相談(制度運用ルールを確認)
- 労働契約書・誓約書(副業禁止条項があるか)
- 厚生労働省のモデル就業規則を参考に比較
就業規則は従業員の閲覧請求権が法律で保障されています(労基法第106条)。
見せてもらえない場合は、労働基準監督署への相談も可能です。
まとめ:副業の自由には“確認”がセット
副業はキャリアを広げる手段である一方、会社との信頼関係や法的責任も伴います。
まずは就業規則を読み、申請の有無・禁止条件・労働時間・機密保持の範囲を確認する。
そのうえで、自分の副業が会社の業務や契約に影響しないかを客観的に判断しましょう。
「自由な働き方」は、ルールを理解してこそ守られる。
安全な副業スタートは“確認”から始まります。